腸腰筋

音楽に夢中になったきっかけはブルースだった。以来、声にしろギターにしろ、黒人の出す音は別物、という感覚がずっとある。

どう違うかは具体的に言えないけど、圧倒的に心が動かされる違いがある事だけは当時でもわかった。

そんな未知の音への憧れが、自分でも演奏をはじめた動機だったように思う。

 

 

時は流れ、鳩山メソッドとかいって声の出し方を探すうちに、見つけたのは声の出し方ではなく、自分の体の歪みだった。

そこで一旦発声法はわきにおいて、体自体に意識を向ける事にした。

 

体のことを学ぶうちに、腸腰筋という筋肉の存在を知った。上半身と下半身を繋げる唯一の筋肉群で、体の奥で眠っているこの巨大な筋肉を目覚めさせることが、力まずに、大きな力を使うためのカギであるらしい。

 

2倍の力でやることではなく半分の力でやれるようになることを練習と定義して以来、声に限らずギターにしろなんにしろ、なるべく指や手などの末端には力を入れずに、根っこの力で動くことを意識してきた。ではその根っこの中の根っこは何なんだろう?ひょっとしたらこの腸腰筋というやつなのでは?そんな仮説を立てて、この筋肉の存在を意識しながら暮らしていた。

 

そんなある日、ネットを見ていたら「黒人の腸腰筋は、日本人の3倍の太さがある」という記述を発見した。直感的に、あの黒人特有の音は腸腰筋から出ているのでは!?と思った。

 

「鳩山メソッド」なる謎の発声法をでっち上げ暗中模索、手探りで進み続けてきたが、まさかこんな形で自分の音楽の原点と繋がるとは思わなかった。

 

とはいえ「腸腰筋3倍説」も単なるネット情報なので、真偽は怪しい。

 

しかし、あの音が出せる理由が「黒人だから」だとしたら諦めるしかないが、「腸腰筋」だとしたら、自分にも出せる可能性が生じる。これはとんでもない希望だし、検証する価値はあると思うのだ。