ふんふんおじさん

声を響かせるカギは喉をリラックスさせることだ。

 

そして、緊張するとまず固まるのが喉だ。

 

いくら一人スタジオでいい声を出せるようになっても、いざ人前に出たら喉に引っ掛かるような声しか出せないとしたら、ボイトレ以前の問題だ。

 

 

メンタルを鍛えるべく、散歩中、路上で唸りはじめた。向こうから女子高生等が歩いてきても、固くなる喉を感じつつ、ウンウン唸り続けながらすれ違う。なんだか「修行している」という実感がある。

 

 

そんな日々を送っていたら、ふと「ふんふんおじさん」のことを思い出した。

 

 

 

バス釣りに夢中だった高校生の頃、放課後、毎日のように釣具屋に通っていた。

 

そんなに広くない店内でルアーを眺めていると、突然脈絡もなく「フンッ!」「フンッ!」と、謎の奇声を発する店員さんがいた。

我々釣り仲間の間では密かに「ふんふんおじさん」と呼んでバカにしていたのである。

 

 

 

 

すれ違う学生相手にウンウン唸っている我が姿を省みて愕然とした。

あの頃の僕らが笑って軽蔑した、ふんふんおじさんに気付けばなっていたのである。因果応報とはこの事か。

 

今思えばふんふんおじさんも、声楽を志していたのかもしれない。